多重債務者の9割以上が「グレーゾーン金利を知らない」との回答

2006年08月27日 12:40

『Mainichi INTERACTIVE』によると、利息制限法に定められた金利・年利15%から20%を超える、いわゆる「グレーゾーン金利」による利息は基本的に支払う義務がないことを、多重債務者の9割以上が知らないことが【国民生活センター】の調査で明らかになった。貸し出し側が十分な情報開示をしていなかったのかもあわせ、グレーゾーン金利の廃止問題にもさらなる一石を投じそうだ。

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記事によると国民生活センターが2005年に弁護士事務所などを通じて多重債務者585人にアンケートを行った結果、90.3%もの人が、利息制限法による金利の制限を知らなかった。全体の全体の7割に300万円以上の債務があり、大半は利息制限法を超えるグレーゾーン金利(上限金利29.2%)で払い続けていたとみられる。同金利による融資は利用者が自らの意思で利息を支払い、弁済内容を明記した書面を受け取るなどの条件を満たした場合に限られるが、実態は消費者金融が求める金利で契約しているケースがほとんど。

また、多重債務者が借入をしたころの年収は200万円未満がもっとも多く(29.9%)、年収が高くなるにつれて借り入れをした人の比率は低くなる。返済が困難になってきた時期は、はじめて借りてから1年未満が20.4%・1年から4年が43.6%と、多重債務に陥った人の場合は4年までの間に6割以上が返済が難しくなったことがうかがえる。

多重債務に陥る「お金の借り入れ」には何らかの理由がある。その理由について「借り始めのとき」と「返済が困難になったとき」それぞれについて尋ねたところ、

「借りはじめたとき」……「収入の減少」や「もともと低収入だったこと」「借金の返済」「事業資金の補てん」が上位
「多重債務に陥り返済が困難になったとき」……「借金の返済」「収入の減少」「低収入」「事業資金の補てん」の順


と、順序が微妙に入れ変わっているのが分かる。借りはじめは(何らかの理由で)足りないお金の補てんのために借りていたのに、返すのが難しくなって、別のところから借りて補てんするという自転車操業になり(いわば「借金を返すために借金をする」状態)、:結果として多重債務に頭を抱えるという図式が明らかなのが分かる。

多重債務者の「借り入れの理由」
多重債務者の「借り入れの理由」

また、「ギャンブル・遊興費」や「物品購入」など、ほぼ100%自業自得的な理由が意外に少ないのもある意味驚きといわざるを得ない。

……と、元記事にあるよりも細かい内容を記載してみたわけだが、実はこの元記事、【多重債務問題の現状と対応に関する調査研究(PDF)】という、2006年3月22日に国民生活センターが発表した資料によるものであることが分かった。さらに調べてみると、NHKでは5月に【テレビCMの影響力が再認識、多重債務者の4割「きっかけはテレビCM」】でも記事として取り上げたように、同じ資料を元に消費者金融分野におけるテレビCMの影響力の大きさを報じている(この時は結局、当方ではおおもとのソースが特定できなかった)。

資料そのものの内容は興味深いところがあるので、グレーゾーン金利の廃止や特例措置などがまとまった時にあらためて詳しく解説しよう。それよりも毎日新聞がなぜこの時期に突然、半年も前に発表された調査結果を引っ張り出して、「あたかもつい先日発表されたかのように」あらためて報じる必要があるのか。気になるところではある。

一応元記事では、さる多重債務者が折衝の上、支払いすぎた分について戻ってきたという取材内容が具体例として記載されている。この取材がようやく終えたのでせっかくだからと、半年前の発表リリースと絡めて記事にしたのだろう(それに、これだけ騒がれているのだから今あらためて調べれば「グレーゾーンなど知らない」という人は9割どころか半分にも満たないのではないかと思われる。当サイトで「グレーゾーン」という言葉が初めて使われたのは今年の2月27日)。

だがあるいはグレーゾーンの廃止に伴う関連各所の論議について、何らかの進展があり、その前振り・布石として今回あらためて半年前の資料を引っ張り出してきた可能性も捨てきれない。

どちらにしてもそう遠くないうちに、グレーゾーン論議については決着がつけられるはずだ。内容次第ではさらに消費者金融銘柄の株価が「ぶれる」場合もあるだろう。


■関連記事:
【金融庁、グレーゾーン絡みで少額・短期貸付に限り金利上限引き下げの対象外へ】

(最終更新:2013/08/26)

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