「ニート」や「フリーター」の厳しい現実を見据え、小学校でも予防授業

2006年07月03日 06:30

時節イメージ[このリンク先のページ(tokyo-np.co.jpなど)は掲載が終了しています]によると、「仕事を持たないニート(Not in Education、Employment or Training)」や「定職に就かないフリーター」について、正社員に就いている人と比べると生涯賃金などにおける経済格差は大きいとし、その現実を知った上で将来を考えてもらおうという授業が小学校で始められているという。

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記事によれば「一生アルバイトをした、いわば生涯フリーター」と「定職について働いた正社員の生涯賃金」の差は平均で約2億円。この現実を見せ付けると小学校の授業で子どもたちは驚きの声をあげるという。【文部科学省】の委託事業としてこれまで中学校と高校を回っていたビジネス専門学校講師鳥居徹也氏による、小学校での授業であるだけに、難しい話は避け、クイズ形式で教えていくとのこと。

鳥居氏はフリーターにはボーナスも退職金も無いなど、さまざまな経済的損失を示していく。またニートについても、親の甘やかしや失敗・挫折などの背景を説明しながら、それらを乗り越えて努力することが大切だということを説明する。小学生らはフリーターは大変、挫折や苦労に負けずに頑張ろうという感想を述べた。

しかし中には授業で説明しても「フリーターになってもよい」と答える生徒もいた。曰く、「ハンバーガーが100円で食べられるのは安い賃金で長時間働くフリーターがいるから。正社員だけになるとそんな安い値段では買えない」と鳥居氏が説明したところ、純粋に「ハンバーガーが高くなるのはいやだ」と考えたのだ。

フリーターやニートに関する問題が現実化してきたのは、ここ十年前後の話。今後彼ら・彼女らの年令が経るにつれ、どのような社会現象が引き起こされるのか、実例がないだけに関係方面での戸惑いも多い。他の教育機関やNPOでも、幼いときからニートやフリーターの現状と将来、リスクについて説明し、あまり好まれるようなものではないことと認識させるようにしている。

【厚生労働省】の調べでは2004年の段階でニートは64万人、フリーターは213万人存在するという。ニートの定義は年齢的には15歳から34歳なため、今後35歳以上の「熟年ニート」が増加する可能性が高いことを考えると、事態は今後深刻化する可能性もある。経済的自立が困難で非婚率も高く、生産性が低いニートやフリーターが増えれば、社会保障の担い手が減る危機も想定される。国では来年度から、「熟年ニート」の正社員化にも取り組む予定だと言う。

とはいえ、アルバイトはともかく、派遣業者関連の法律の緩和で派遣業者やその類が大量に生み出され、企業側にしても「保険や年金など正社員はお金が掛かりすぎる。面倒が無くいざとなればすぐに解雇もできる派遣社員やアルバイトの方がよい」と考える傾向が強いのも事実。先の「ハンバーガーが100円なのはフリーターがいるから」と小学生が答えた事実がよい例だ。

だが派遣社員は正社員と比べ、経済的損失もさることながら技術や経験の蓄積・継承が行われないという中長期的な損失があることを忘れてはならない。しかもこの損失は、すぐに結果は出ないものの、本人だけでなく、企業や国レベルでのマイナスでもある。

現在フリーターやニートの人たちを正社員化させるアクションは当然必要だ。だがそれと共に、なぜフリーターやニートが大量に発生するようになったのか、社会や企業の仕組みの観点から考え直し、手を加える必要があると思われる。いやむしろ、そちらの方が急務だろう。企業の「収益体制」にメスを入れねばならないことを考えるとハードルは高い。しかし放っておいては手が付けられない状況になりうる。今ならまだ間に合う、かもしれない。

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