ロシア、最新主力戦車T90-Sを各国報道陣に公開し高性能をアピール

2006年05月21日 12:30

T90-Sイメージ『NNN』などが報じたところによるとロシアで5月17日、外国メディアを招いて軍事施設内で最新型主力戦車T90-Sが公開され、デモンストレーションが行われた。通常は立ち入ることですらほぼ不可能な場所において本来機密であるはずの新型兵器の公開には、プーチン大統領が推し進めている「軍事力の強化宣言」の表れだけでなく、「海外にも武器を売り込もうとする武器輸出大国」としてのロシアの思惑が見て取れるという。

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T90-SイメージT90-Sはロシア陸軍の最新主力戦車で、その身軽さからか写真にもあるように、10メートルほどをジャンプしても走行が可能なことから「フライングタンク」とも呼ばれている。また、赤外線センサーや水深5メートルの川も渡れる(20分で装着可能なアタッチメントが必要)渡河機能もあるなど、機動力や夜間作戦能力にも優れているなど、柔軟性の高さが前面に押し出されている。重量は46.5トンとこのタイプの戦車ではもっとも軽い。

ロシア陸軍ではこのT90-Sを31両(一個大隊程度?)導入する予定とのこと。また今回のデモンストレーションでは中国やイランなどが関心を寄せていたと報じられている。

T-90Sは2004年1月に量産型第一両目が送り出された、まさに最新鋭の主力戦車。元記事では31両がひとまず配備されるとあるが、現在91両がメーカーと契約済みで逐次配備される予定。主力装備は125ミリ滑空砲1門。各種砲弾を発射することができる。またその他にも、NATO側ではAT-11スナイパーと呼ばれている対戦車ミサイル(射程4キロ)や、7.62ミリ機銃、12.7ミリ対空機銃を装備している。

防御面では通常装甲とリアクティブアーマーの両方で構築されており、赤外線ジャマーや対NBC(核・生物・化学兵器)装備を備えている。

T90-Sイメージ一番身近に存在する、陸上自衛隊の最新主力戦車90式との違いが気になるところだが、「もっとも軽い」といわれているT90-Sの46.5トンに対して90式は50トンと、意外と軽量化されていることが分かる(ちなみにアメリカのM1A2エイブラムスは70トン近く、ドイツのレオパルド2A5は62.5トン)。防御性や攻撃力(主砲の威力)などについては比べようもない(実際に戦車戦をするわけにもいくまい)。

なお元記事では「インドや中国が興味を」とされているが、別記事などを調べてみると(【新浪軍事:中国語】)少なくともインドはすでにロシアと契約を結んでおり、400両ほどを「新たに」納入する予定だという。「新たに」というのは、すでに過去(2001年)においてインドは300両ほどのT90-Sを購入済みで、一部はインド国内でもノックダウン(部品に分割して運搬し、現場で組み立てる生産方式)生産されている。

また、気になる値段だが、上記記事などによると「400両でアメリカドルにして9億ドルから10億ドル」とされており、1ドル110円レートで計算すると990億円から1100億円/400両、つまり1両あたり約2億5000万円から2億7500万円という計算になる。先に挙げた90式戦車など西側主要戦車の値段(90式:8億円、M1A2エイブラムス:7億円、レオパルド2A5:10億円)と比べても非常に「お買い得」ということだ。単純計算では、陸自の90式戦車1両分の予算で3両のT90-Sが買えることになる。

もっともロシア製兵器は湾岸戦争でイラク軍が装備していたそれが、西側諸国の兵器、特にアメリカ製兵器にまったく太刀打ちできなかったことから、国際兵器市場における評価がどん底に落ちているという実情がある。高性能とお買い得さを武器に、今回のようなデモンストレーションをしなければ売れないという、切羽詰った状況が一面にはあるのかもしれない。

それにしてもインドだが、ロシアの最新鋭戦車を合わせて800両近くも買い込んで何をするつもりなのだろうか……。


(最終更新:2013/08/29)

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