ゲームなどの映像は子どもに悪影響をおよぼすのか、埼玉県知事が共同研究提案

2006年05月12日 06:30

時節イメージ[このリンク先のページ(tokyo-np.co.jpなど)は掲載が終了しています]によると、5月15日に開催される八都県市首脳会議(首都圏サミット)で、上田清司埼玉県知事は5月9日の記者会見において「テレビゲームなど映像の子どもの脳への悪影響」についての共同研究を提案することを明らかにした。元記事ではいわゆる「ゲーム脳」という言葉が用いられている。

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テレビゲームが子供に及ぼす影響についてはすでに【文部科学省】が2004年度から10年以上継続予定で、全国的な乳幼児の影響調査などを始めているという。同省スタッフも「子どもが切れやすくなっているといわれるが、テレビゲームなど映像の影響なのか、母親などとのコミュニケーション不足なのか、原因が分からない(科学的な証明が、という意味)。調査で客観的なデータを積み上げたい」としている。

上田知事は首都圏サミットで提案する共同研究について、「文部科学省と違った角度で我々(知事ら)が一体になって取り組めば成果が出る。国の調査結果をうのみにしなくても済む」と語っている。知事の構想では「独自調査」とは「脳が固まる前の9歳児まで」が調査の対象。そして

テレビゲームやビデオの映像を見ていると、脳の前頭前野の機能が低下し、脳内が汚染されるというデータもある。子どもの異常な犯罪が増えている。知らないふりはできない。研究の成果次第で、(テレビゲームなどの販売を)規制せざるを得ない事態もありうる。


と断じているという。

一歩間違えると「そういう主張をすることこそが『ゲーム脳』脳に他ならない」と嘲笑されかねず、言葉のみが独り歩きしている「ゲーム脳」。さる教授の独善的主張によるところが大きいのだが、「ゲーム」を批難するのに格好な材料であることから、世間一般に広まっている。そもそもこの「ゲーム脳」、脳波の測定が十分でない、ゲームと行動との因果関係が明確化されていない、ゲームとその他メディアとの比較がなされていない、仮に悪い影響があったとしても「規制すればすべて解決」という根拠もないなど、まさに「最初に結果ありき」的な内容でしかない。どんな理不尽な主張も、しかるべき媒体とそれなりに著名な肩書きを持つ人物による主張としてなされれば、ある程度世間一般に認知されてしまうという悪い見本のようなものだ。

今回の埼玉県知事の主張・提案も、あるいはこの「『ゲーム脳』脳」であるがためのものなのかもしれない。

なお、偶然かもしれないが先日NHKの[このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています]において、ゲーム脳と並列して語られることの多い「キレる子供」についての特集が報じられていた。これは「キレやすい子供は脳のある部分の活性化がうまくいっていない。主に多数同時に情報を処理する能力に欠ける部分がある。データが不十分なので断言はできないが、人と声を出して語り合ったりはしゃいだりすることや区切りをしっかりとつけて行動させるような訓練を繰り返すなど、人とのコミュニケーションを活発化することで、キレやすさを治すことができる。恐らくは対面行動における多数の同時並列的情報処理(ゲームそのものだけではなく相手の表情や行動パターンを『読む』)に秘密があるのだろう」という主張の内容だった。

要は「ゲームをするならマルチプレイ、しかもできれば相手の姿かたちが見えるようなものが良い」というもの。俗に言う「引きこもり」がキレやすいという現象もこれで説明ができる。

ただ、ゲームは一つの道具、というかプロセスに過ぎず、結果でも結論でもない。「ゲームをプレイするとキレやすくなるからゲーム禁止」という短絡的発想はそれこそ「ゲーム脳」的な考え方に過ぎないし、「ケガをするから包丁全面禁止」「勉強やその他行動に集中できなくなるからテレビとラジオは使用禁止」とするようなもの(実際そのような主張をしている人もいるが……)。

仮にゲームを全面取りやめにしたところで、現状を変える努力を本人や周囲が行わない限り、また別の批難対象が探し出され責任が押し付けられるだけに過ぎない。魔女裁判のようなものだ。なぜゲームにそこまで集中するようになったのか、そしてかつてはごく当たり前で、脳の訓練にも役立つといわれている対人関係が養われる遊びや行動が、子供たちの間であまり行われなくなったのか。「ゲーム脳ゲーム脳」と騒いでいる大人たちこそに原因があり、是正する必要があるのではないだろうか。

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