中東情勢を再現したシミュレーションゲーム、アメリカの大学院生らが開発し会社も設立

2006年05月05日 07:30

ピースメーカーイメージ[このリンク先のページ(Cnn.co.jpなど)は掲載が終了しています]によるとアメリカのカーネギーメロン大学の大学院生2人が中東情勢を取り扱ったシミュレーションゲームを作成、会社を設立して一般向けの販売を試みたりさまざまな方面へプレゼンテーションを行っている。ゲームの名前はピースメーカー(Peace Maker)。混沌とする中東情勢にあわせた、何とも皮肉的な名前。現実を忠実にたどりながら娯楽性を追及しようとする方向性に注目が集まっているという。

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ピースメーカーイメージ記事によればこの2人とは、イスラエル情報当局の元職員という経歴を持つアシ・ビュラク氏と、美術系大学卒業後ゲーム開発を手がけてきたエリック・ブラウン氏。ゲームの内容はといえば、戦略級(ストラテジー)の視点からのもので、プレイヤーはイスラエルの首相かパレスチナ自治政府議長の立場から、政策を決定。国際社会や世論の動向にあわせて対応策を打ちつつ、さまざまな政策を実行していく。画面にはホンモノのニュース映像なども取り入れているという。

この「ピースメーカー」のような、現実の社会問題や経済問題を取り扱い、シミュレーション性・教育性の高いゲームソフトを最近では「シリアスゲーム」と呼んでいるそうだが、アメリカでは主に政府職員や軍兵士らの訓練用として制作されることがほとんど。ソフトとしての売上よりも訓練の成果が重要視され、ゲーム性は二の次。

一方「ピースメーカー」では娯楽性にある程度配慮しているのが特徴だと記事では分析している。その一方、それでも「シリアスゲーム」としてくくられるレベルのこのゲームが、有意義ではあるものの商業的に成り立つのかどうか、疑問視する声が業界内では強いという。いわく「ゲームプレイヤーの多くは『現実から離れた世界』で遊ぶことを望んでいるのであって、リアリティがあまりにも高いゲームは好まれない」とのこと。だが製作側は「関心は高く手ごたえはある」と自信を隠さない。

バランスオブパワーイメージこの「シリアスゲーム」というジャンルにあてはまる、シミュレーション性の高いゲームは何も「ピースメーカー」に始まったわけではなく、パソコンゲームの歴史と共に存在する(そもそも暗号解析や砲弾の弾道計算からコンピューターの歴史は始まったのだ)。日本でパソコンが普及しだしたころ以降に限定しても、海外では『Guns and Butter』『Balance of Power』『Balance of the Planet』クリス・クロフォード氏(Chris Crawford)が次々と世に送り出したシミュレーションゲームの数々がゲーム業界を席巻したし、ウィル・ライト氏(Will Wright)による『Sim』シリーズも、実はシミュレーション性が高いゲームでもある(『Sim』シリーズはゲーム性とシミュレーション性が高レベルでバランスの採れた、稀有な成功例)。日本でもかつては【コーエー(9654)】をはじめ数社が同様のオリジナルソフトを出していた。

しかし今のゲーム業界では日米ともに「シリアスゲーム」の状況はパッとしない。アメリカではまだゲームを「単なる遊び」以上にとらえるところがあるので今でもビジネス系でシリアスゲームは定期的に登場しているが、日本ではほぼ壊滅状態と言って良い。原因は上で指摘されているように、ズバリ「売れないから」。

とはいえ先に紹介した【FOOD FORCE】のように、作り方さえ間違わなければそれなりにニーズがあるのは確実。売れないのなら収益体制をどうにかすれば良い。アメリカにあるような訓練用・教習用の開発と納入をメインとして採算はその時点でキープし、一般販売用をついでに開発するといった形にしてもよい。「FOOD FORCE」が好例となるだろうが、宣伝費・宣伝媒体と割り切るのもアリだろう。

個人的に「シリアスゲーム」のジャンルは政治・経済・軍事いずれの分野においても鼻血が出るほど大好きで、かつて国内外で発売されたさまざまなこのジャンルのゲームをプレイ・収集している当方。ブームにまで至らなくとも良いから、「シリアスゲーム」の復権とそれなりなペースでの発売を心から望みたいところだ。


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