「胎児も保険金請求対象」最高裁初判断

2006年03月29日 12:20

時節イメージ[このページ(Sankei Webなど)は掲載が終了しています]が報じたところによると、胎児の時に遭遇した自動車事故の影響で、出産後に重度の障害が残った場合、胎児は自動車保険における「無保険車障害条項」(加害者側の自動車の保険金によって損害をまかないきれない場合、それをサポートするという仕組み)に基づく保険金の支払い対象となるかどうかが争われた訴訟の最高裁判決が3月28日に下され、「胎児は被保険者の同居の親族に準じて保険金を請求できる」との初判断を下した。これは第二審の名古屋高裁判決を支持したことになり、【三井住友海上火災保険(8752)】の上告を棄却した。

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記事によると、妊婦が運転する乗用車が他の車と衝突し、その事故後、緊急の帝王切開手術を受けて出産したが仮死状態だったため、重度の障害が残ってしまった。そして胎児と両親が自動車保険を締結していた三井住友海上火災保険に対し、相手事故車の保険が自賠責保険だけだったことから、被保険者や配偶者らが保険金を請求できる「無保険車障害条項」に基づく保険金の支払いを求めて提訴。保険会社側は「胎児は支払い対象にならない」と主張していた。第二審では事故の相手側と会社に対し、合計で1億3500万円ほどの支払いを命じ、同社は上告をしていた。

最高裁では今判決理由につき

・民法により、胎児のときに受けた不法行為で後遺障害が残った場合、胎児は損害賠償を請求できる。
・胎児は被保険者の同居の親族に生じた障害および後遺障害による損害に準ずるものとして、無保険車傷害条項に基づく保険金を請求できる。


とし、妊婦と両親側の主張を認めている。要は「まだ生まれていなくても家族の一員とみなして支払いの対象にすべき」だという判断。これは「保険の契約内容を形式的に見るのではなく、保険本来の目的をふまえて解釈すべきだ」ということであり、画期的な判決内容といえる。

判決理由でも語られているが、一般に民法では胎児が母胎から全部露出した時、刑法では一部露出した段階で人間と認められることになる。また、民法886条にあるとおり、相続については胎児であってもすでに生まれたものとみなされる(胎児が生まれた場合に限る。死産となった場合、相続関係は確定されない)。法的にはこの相続関係に近い解釈が行われたと思われるが、法解釈云々というよりも、発言にあるように「保険本来の目的を踏まえて解釈すべきだ」という「目的論的解釈」にそった判断だといえよう。

保険会社側も今後は、どのような状況が起きうるのか、これまで以上に細部にわたって規則設定をする必要があるだろう。またそれに加えて「常識的に」判断する裁量も求められるに違いない。今件についてもイメージダウンや裁判費用、手間ひまを考えたら、すぐに両親らの求めに従った方が結果的に保険会社にとってもプラスになった可能性が高いからである。

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