ビックコミックビジネス発売、ビジネス漫画の「難しさ」を考える

2006年01月21日 18:30

ビックコミックビジネスイメージ小学館からビックコミックオリジナルの増刊として、「ビックコミックビジネス」が発売された。さまざまなビジネス物語や著名ビジネスマンのエピソード、話題になっているビジネスの漫画化など、漫画サイドからビジネスを気軽に楽しみ知識として身につけようというタイプの季刊誌、なのだが……。

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ビックコミックビジネスイメージ今号の中身はといえば、昨年青色発光ダイオードの特許がらみで有名になった中村修二氏の物語が巻頭に掲載。フリーターから東京中野区の区議員になったある議員の物語、ワイナリーを作り上げたある脱サラサラリーマンの話、ホンダの創設者本田宗一郎氏の話など、実際の著名ビジネスマンらの話はもちろん、リスクマネジメントや営業などの面にスポットライトを当てた漫画が掲載されている。あの「ナニワ金融道」の青木先生のプロダクションが描くパチンコ業界の実情(?)を描いた話題作もある。

単行本タイプで単独のテーマを取り上げた、ビジネス漫画は今やごく当たり前の時代だが、コンビニなどで週刊誌と並んで発売される集大成本はたとえ季刊誌でも珍しく、それなりに期待していたのだが、今号は発売予定の去年12月よりもほぼ一か月遅れての発売になった。しかも内容をよく読むと首を傾げる点がいくつか。

「季刊誌」という性質上、連載漫画であっても一応一話完結としても読めるタイプのものばかりなのだが、今回は連載している漫画のほぼすべてが終了してしまった。ざっと挙げても「勝ち組フリーター列伝」「派遣社員 お銀」「サラReマン」「営業ノススメ!」「カブイチ」など。先の青木プロダクションの「パチンコ無間道」まで最終回になっている。前号では終わる気配など微塵にも見せなかったのに、いかにも不自然な形。

さらに前号までは巻末に掲載されていた「次回予告」も掲載されていない。発売日の延期、連載漫画の突然の一挙終了、次回予告無し、となれば、他の雑誌の例を見れば、恐らく休刊であるという結論が導き出される。定期発刊誌だとしても元々増刊としての位置づけなのだから休刊も何もないのだろうが、やはり売行きが今ひとつだったのだろうかと想像せざるを得ない。

この冊子、元々同社の隔週刊誌ビックコミックの増刊で発売されたビジネス特集本が好調で何度か中綴じタイプで発売されたあと、同じく中綴じでビックコミックオリジナルの増刊として発売。そして平綴じに改められたのと同時に季刊誌として発売された。それと共に「企業PR用タイアップ漫画」としての位置づけを明確化し、巻末で「PR漫画を掲載して御社を宣伝しませんか」という募集も行っていた。

出版業界の不況が続く中、各出版社は抱えている漫画家や出版ラインを効率よく運用するために、単行本やパンフレット、漫画などで企業向け漫画を積極的に営業するようになった。元々企画本ということで普通の冊子ではよくある手法ではあったのだが、最近は文庫タイプをはじめとした漫画にもその傾向が顕著になりつつある。

ビックコミックビジネスは、あるいはビジネスマン向けのビジネス漫画誌としての位置づけをしながら、このような「タイアップ漫画の展開の場」としても活用するつもりだったのかもしれない。だが企業側の食いつきは今ひとつだったようだ。また、定期発刊が事実上休止するということは、読者の受けもあまり良くはなかったのだろう。

小学館では似たようなターゲット向けの冊子として、やはり平綴じの「ビックコミックゴールド」を発売していたが(こちらは非アダルト系大人向けの漫画月刊誌)、やはりセールスの面などからすでに休刊してしまってる。

コンセプトは悪くないと思う。だが、(恐らくは)冊子の継続や満足のいくセールスが得られなかったということは、方向性や展開の仕方に工夫が足りなかった、ということになるのだろうか。タイアップ漫画にしても、描かれていることが事実でいかにも「宣伝宣伝」しているので無ければ、特に読んでいて苦痛になることもないのだが、読者への訴え方、方法論に何か問題点があったのかもしれない。もう少し見せ方を変える(例えば「ビジネス」という大まかなくくりではなく、「起業」「株式投資」「危機管理」というように、もう少し扱う範囲を絞り込んでみるとか)などの工夫が必要なのだろうか。

テレビ番組では、テレビCMの効果の低下が叫ばれる中、「ドラマ内広告」など通常の番組の内容以上にビジネスライク・タイアップ番組に近いものを作っていこうという動きが見られる。この手法云々という意味では、テレビよりも漫画の方が何歩も先に進んでいる。

もしかすると「ビックコミックビジネス」は方法論に考察が足りなかっただけではなく、時期的にまだ早すぎたのではないだろうか。

個人的には「ビックコミックスペリオール」で株式関連の漫画を連載していた(なぜか単行本化されてない……)戸田尚伸先生の作品が読めなくなるのが残念でならない。


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