最高裁、特約あっても滞納時の超過利息は受領できずとの初判断

2006年01月16日 08:30

【Mainichi INTERACTIVE】によると、消費者金融などの特約に「返済が滞れば一括弁済」するとの特約がある場合、業者が利息制限法の上限を超えた利息を受け取れるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法定は1月13日、「特約は借り手に高利を事実上強制するもので、超過利息は受領できない」との初判断を下した。貸金業界では同種の特約が一般的・業界の慣習となっており、超過利息を受領している業者が大半とのこと。判例ができたことで現状では超過利息受領が事実上不可能となり、貸金業者の業界に与える影響は少なくない。

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利息制限法では金利上限を15から20%としている一方で、貸金業規制法では「業者が一定の書面を交付した上で、借り手が強制でなく任意で支払った利息は、出資法の上限である29.2%以下なら有効」とする、俗に言う「みなし弁済」規定がある。特約による事実上の超過利息はこの法の隙間をついたもの。

今裁判において1審・2審では「借り手は契約内容を認識しており任意で超過利息を支払ったから問題はない」と判断、弁済を命じていたが、今回最高裁では

・特約は『超過利息を払わなければ一括弁済する義務がある』との誤解を借り手に与え、一括弁済を避けるために超過利息を支払うことを事実上、強制している
・誤解が生じなかった、という特段の事情がない限り、任意で超過利息を支払ったとは言えない


とし、「特段の事情の有無」を判断するために審理を広島高裁に差し戻した。

さらに判決では、この「みなし弁済」に関する書面の記載方式で、内閣府令である貸金業規制法施行規則が簡略を認めた規定は、同規制法の規定に反するので無効であると断じた。法の柔軟解釈「など」を行うために付け加えられる施行規則の中で国が制定したものを最高裁が無効とするのは異例とされている。当規則を管轄する金融庁側でも「重く受け止めており、その内容について十分に精査してまいりたい」と一応は考慮する旨コメントしている。

簡単にまとめると今回の最高裁判決は貸金業者に対して

・「一回でも返済期限を過ぎたら残金全部返せ。それがイヤなら貸金業規制法以上の高利利息を払え(みなし弁済)」は基本的に無効。
・利息制限法の上限金利である15から20%を順守しろ。


という判例を提示したことになる。「みなし弁済」を用いることで通常上限の約5割り増しである29.2%までの利息を得ていた業界内部では、「法律で認められたみなし弁済規定を一方的に否定するもの。このままでは規定が死文化する」「利下げや超過利息の返還を強いられれば、経営が成り立たない」という不満の声があがっているという。

だが規定の上位法である利息制限法を優先せずして規定の死文化も何もあったものではないし、上位法の存在を否定するような規定は存在価値そのものを疑われるべきである。また、不法・違法行為をしないと経営が成り立たないから法を曲げるような規定を作るなりして合法化しろというのは本末転倒に他ならない。

今回の判決は貸金業者全体に対し、少なからぬ経営方針の変更を強いるなど、影響を与えることは間違いないだろう。

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